ハゲワシ(Vulture)
ハゲワシ(禿鷲)は、鳥類タカ目タカ科のうち死肉を主な餌とする一群の種の総称です。
死んだ動物に群がる姿から、弱ったものにたかる悪いイメージのたとえに使われることが多い「ハゲタカ」という言葉ですが、正確にはハゲタカという動物はいません。
ハゲワシは死んだ生き物の肉を食べて生きています。
ハゲワシの頭部はクチバシを死骸に深く差し込めるように羽毛が生えていません。
頭部に羽毛がないことによって、血液やバクテリアが付着しにくいというメリットがあります。
また、腐りかけた肉には大量のバクテリアやコレラ菌などが含まれることがあるが、ハゲワシの持つ強力な胃酸で溶かしてしまいます。
足にも強烈な酸性の尿をかけておくことでバクテリアは生きられません。
ハゲワシやコンドルの仲間は環境衛生を維持する掃除屋として、非常に重要な役割を担っています。
もしもアフリカのサバンナからハゲワシがいなくなったら、辺りは動物の死体だらけになり、伝染病などがまん延するとも言われています。
また、インドのゾロアスター教徒やチベットの仏教徒は死ぬと「鳥葬」されます。死者の亡きがらをハゲワシたちに食べてもらうのです。
ゾロアスター教(拝火教)の戒律では、火、土、水は神聖なものであり、死によって汚してはならないとされています。
つまり火葬、土葬、水葬いずれも禁じられているのです。そこでハゲワシの力を借りて「鳥葬」を行います。
そのためインドのムンバイには、「沈黙の塔」と呼ばれる鳥葬専用の施設があります。
チベット仏教の場合、標高が高く、森林限界より上にあるチベット高原では、亡骸を荼毘に付すための薪が手に入りません。
表土も浅く、岩ばかりの環境では穴を掘って埋めるのも困難なので、ハゲワシの力を借りるのが最善の方法とされています。